このクルマは令和のKP61だ ジムニーシエラ(3)

燃費
ジムニーは燃費を気にして乗るようなクルマじゃない、と怒られそうですが参考までに。ちなみにこのシエラはアイドリングストップ機能が追加されたモデルです。
前述の通勤での燃費はこんな感じです。

446km走って平均18.0km。数キロほど自動車専用道を走りますが、ほぼ山あり谷ありの田舎道、まだ昼間は少し暑い時期だったのでオートエアコンは時折使用。市街地では渋滞にはまりながらもこの数値は頑張っていると思います。そして短距離であれば19km台も可能です。

もちろん街乗りばかりだと、こうはいきません。
ところでこのアイドリングストップには面白い使い道があります。前述したようにシエラのトランスミッションはややギヤが入りにくいものです。特に1速はシブく、時にはクラッチを踏みなおしたり一度他のギヤポジションに入れたりなど(これはリバースに入れる時にもお勧めです)まあ色々やるわけですが、ある時再始動時のミッションの振動が役に立つことに気が付きました。クラッチを切るとエンジンが再始動するのですが、この時1速方向に軽く力を加えてやると振動の「どこか」でうまく嚙み合うのか、スコンとギヤが入ります。これがなかなか気持ちいいのです。どうでもいい話でした。

その他
セーフティサポートシステムについて少し。曲がりくねった狭い国道などで大型車とすれ違うと、必ずと言っていいほど警告を表示します。一度だけですが「あれ、今自動ブレーキ作動したのかな」と感じたこともありました。レーンはみ出し警告もやや頻繁なような。それだけセンサーが過敏なのかというと、シーンによってはそうでもないような気もするし。そういえばそのブレーキもなんかこう、うーん、どう言えばいいのか、今何かした?と感じる時が多々あったり。これもよく分かりません。
それと、旧型であれほど問題視された「前輪の振動」に関する話を全く聞かなくなりました。ホイールバランスの調整やキングピン周りの整備を行ったノーマル車であっても完全に抑えきれない、いわばジムニーの宿命ともいうべき現象なのですが、新型は解決してしまったのでしょうか。

最後に
悪路でこそ真価を発揮する、ジムニーはそんなクルマです。今回書いたことはあくまで舗装路に限った話であり、残念ながらジムニーの本当の実力をお伝えすることはできませんでした。では舗装路ばかり走っていてはその魅力が分からないのかというと、そういうわけでもないのがジムニーの面白い所です。

初めてジムニーに乗ったとき私は経験したことのない「荒々しさ」に驚きました。ラダーフレームにリジッドアクスルの4WDってこんな乗り物なのかと。ゆさゆさとした横揺れ、バタバタ跳ね回る足まわり、強烈なキックバック。ただ不思議なことに、それが全然不快じゃない。いくら走っても全く退屈しない。なぜだろう。やがて分かりました。このクルマは、とても「おしゃべり」なのだということを。
運転している間中、ジムニーは常に話しかけてきます。サスペンションの動き、エンジンの回り具合、ミッションの変速動作、ステアリングのキックバック、ブレーキバランス、燃費。とにかく色んな言葉で自分の状態や路面状況を事細かに伝えてきます。そうして、ずっとドライバーと会話しようとするので、運転していて退屈することがないのです。
ジムニーは本当に面白い。
そして古ぼけた昭和生まれの私は、これこそが本物のクルマだ、なんて思ってしまうのです。

このクルマは令和のKP61だ ジムニーシエラ(2)

さて、シエラの5速MTですが、私には少しばかり扱いにくいものでした。分かりにくいゲート。動きのシブさ。盛大に離れたギヤ比。痛む五十肩をなだめすかしながら操作するも時折シフトミス、シンクロが抗議の声を上げます。丁寧に、とか言っておきながらこの有様(ちなみに私のJB23はAT)。そうか。ようやく私は気づきました。この5速ミッションは本質的に昭和のものなのだ、と。
いくら自動ブレーキを備えた最新のスズキ車だと言っても、そこはやっぱりジムニー、与えられるべきはこのような信頼性は高いが古風なギヤボックスということなのでしょう。いや…そもそも3ペダルMT自体が「古臭い」存在だということを私は忘れていたのかもしれません。
ともあれ、それが理解できた以上あとは体が「思い出す」のを待てばいい。気持ちを切り替え、順応を待ちます。
ところで搭載されるK15Bエンジンですが、吸気側にVVTを備えるDOHCで、JB74が先代から飛躍的に性能向上を果たした、文字通りの原動力となっているようです。実はこのVVTの作動条件を知りたくて色々調べてみたのですがよくわかりませんでした。正直どこで切り替わっているのか分からないのですが、それゆえ全域で扱いやすい事は確かで、前述の通りのワイドレシオでもとくに不便はありません。具体的に言うと、このぐらいならとシフトダウンをさぼって代わりにアクセルを開けたとしても簡単にはノッキングを起こさないのです。意図的に乱暴なアクセル操作を行っても冷静についてくる感じで、このあたり電子制御スロットルの恩恵もあるかと思います。そんな感じでフラットかつ素直に回るエンジンですが、強いて言うなら4千から6千の間ぐらいがパワーバンドでしょうか。ただ登りでは無理に引っ張って回転の上昇を待つより早めにシフトアップする方がよさそうです。いずれにせよセッティングに優れたエンジンという印象です。それに回した時の音もなかなか迫力があって良いのですよ。それとこのエンジン、ベルト類がカバーで覆われており点検が大変そうですが、冬場などエンジンルームに入り込んだ動物が事故に遭いにくくなる、というメリットもありそうです。いいことですね。
走行中の乗り心地ですが、驚くべき変化です。比較対象のJB23が軽であり、しかもスプリングを変えていることを差し引いても驚異的な改善と言ってよいでしょう。ただし、この乗り心地の良さはスプリングの設定やタイヤに頼ったものであり、もともと持っている水平方向の変な揺れやギャップで足元がバタバタ跳ねるような動きが消えたわけではありません。そしてこの改善の方向性が、速度が上がるにつれ私には問題に感じられるようになってゆきます。
この頃私は片道70数キロ、山あり谷ありワインディングロードありという通勤をしており、かなり走りこむ機会がありましたので、その体験をもとに書きます。
まず直進安定性についてですが、ステアリングダンパーの装備等の改良もあって路面のギャップによるキックバックでハンドルをとられることが減り、結果的に改善されました。今回のモデルチェンジで一番素晴らしい出来事です。ただ、構造上仕方ないのですがステアリングは重めです。
またブレーキも扱いやすく普通に効くようになり、これも乗用車らしさを感じさせてくれる一因となっています。
カーブではどうでしょうか。JB23はフロントミッドのFRらしい(2輪駆動時)素直なハンドリングの持ち主でしたし、前述の「ジムニーを話そう」にも今回のモデルチェンジでハンドリングはよりシャープになったと書かれているのですが…実際はそのー、全然曲がりません。流れに乗った普通の速度であってもなかなか厳しい感じです。
ここで一つお断りさせていただきますが、これは、そしてこれから書くことは、あくまでも私個人の印象であり事実と異なる場合もあります。特にジムニーに関してのプロの主張と異なる部分は「ホンマかいな」ぐらいの気持ちで読んでください。
まず最初の切り込みにほとんど反応してくれません。かなり遅れて曲がり始める感じです。なのでここからさらに切り込んでいく、いわゆる「コジる」操作になりがちです。切り込む速度を上げたいところですが、わずかな荷重移動で大きくロールしてしまう足回りなので、切るタイミングを早める方向がよさそうです。そのコーナリング中に発生するロールですが、なんというかリヤから沈むような、人間でいう腰砕けのような感じとでも言いますか、非常に不安定な状態になります。一度だけですが、登りカーブで大きな駆動力をかけた時アウト側のリヤタイヤから「ガサッ」と音が聞こえたような気がしました。まさか内張と接触したわけではないとは思うのですが…。
私は最初この曲がりにくさはタイヤのグリップ性能が低いことが原因だろうと考えました(装着タイヤはグラントレックAT20 195/80R15)。確かにスプリングの柔らかさがそのような状況に持ち込んでいる面もあるかもしれません。しかしそれでもコーナリング中、さらに切り込む必要が生じた場合でもちゃんと着いてくるのです。トレッドには思った以上に余裕がある。このことから、おそらく80というハイトを持つ柔らかいサイドウォールにも原因があるのではないでしょうか。ハンドルを切った時、まずタイヤ本体がねじれることで一度入力を吸収してしまい、その後大きな変形とスリップアングルを発生させながら曲がっていくのだろうと想像します。空気圧を指定値より上げてやれば多少は改善されるかもしれませんが、それよりは他銘柄タイヤでどのように変わるか、例えばヨコハマのジオランダーなんかを試してみたいですね。
いずれにせよ、このハンドリングは少しばかり危険だと感じます。柔らか過ぎるのです。おつりも食らいやすい。それゆえ一発で決められなかった時のラインコントロールは姿勢を乱さないよう慎重に行わなければなりません。その場合ソーイングよりはアクセルのオンオフの方が無難です。
もし足回りを変えるのならまずショックからというのがセオリーですが、私としてはそれより先にリヤスタビライザーが欲しいです。実際それでどのように変化するかは分かりませんが、過大なリヤアウト側の沈み込みがフロントイン側タイヤのグリップを低下させることでアンダーを助長している可能性も無くはない、と考えるからです。
なんだかネガティブな話に終始してしまいましたが、この足回りがお買い物車としての乗り心地ばかりを考慮したものではなく、クロカン性能をも求めたものであると信じたいところです。

 

今日も私は緑豊かな山間部の国道を走り続けています。登りがきつくなってきました。軽くアクセルをあおってギヤを一つ落とします。さらにダブルクラッチを切ってもう一つ。エンジンの回転が上昇していきます。カーブに入ると大きくロールしますが意外と踏ん張ります。ジムニーの面白い所は、ここからさらに追い込んでゆくとリヤがムズムズしはじめることで、私はよくデフの入った車両でこのままスライドに持ち込んだらどうなるだろうと想像します。やがて道は下りへ。ブレーキが信用できるため不安なくカーブへ進入していけます。うん、意外と曲がる。S字。リヤへの負担が減った分だけ前輪の状態に集中できますが、テールを振ってしまうと危険なので一つ目は極力ロールさせないよう慎重にブレーキングしながら通過します。そのままサスを抑え込んだ状態を維持しつつ二つ目へ。向きが変わるのを待ってアクセルを踏み込みますがアンダーが出やすい場面でもありますので、ここは左足で抑えるのが有効です。二つ目を抜けます。あれ、結構速いなあ。さらに加速。
回転上昇と共に勇ましい排気音を奏でるエンジン。ワイドレシオゆえ私の荒っぽいヒールアンドトゥまで受け入れてくれる手ごたえのあるミッション。高まる集中力を感じながら、私はあるクルマを思い出している自分に気が付きました。
「これは…KP61だ」
二十年ほど前、少しの間だけ乗ったKP61。すでに立派な旧車だったにもかかわらずタイムマシンから抜け出してきたかのような異様なコンディション、そんな貴重なクルマで雪道やダートラの練習会を走り回った私。でも最高に楽しいクルマでした。
シエラとスターレット。そりゃあもちろんハンドリングには天と地ほどに違いがある。そもそも作られた目的が違う。なのに私の中の何かが同じ匂いを感じ取っている。俺はこういうクルマだよ、お前はどう向き合う?小柄な体躯で豪快に走りながら語りかけてくる2台のクルマ。重なり合う二つの時代の中、私は彼らへの答えを探すように無心に走り続けます。すべてを忘れて。

 

 

 

 

このクルマは令和のKP61だ ジムニーシエラ(1)

 

JB74ジムニーシエラ(JC)5MTにしばらく乗る機会がありましたので、感想を述べたいと思います。

登場からすでに4年経過しているうえ、走行条件は舗装に限るという感想文になりますが、未だ納期は長く、ディーラーのお話ではATの受注の方が圧倒的に多いことから普段の買い物にも使えるセカンドカー扱いで購入される人もおられるだろうということで、書きます。

ただし、旧型との比較については、比較対象車が私の愛車である24万キロ走行のJB23Wジムニー(4型)となりますので、あんまり参考にはならないかもしれません。申し訳ないです。

 

外観

旧型に比べて四角くすっきりとしたデザインは、働く機械の機能美を感じさせるものです。これにより搭乗者の頭や肩辺りの空間が拡がり、居住性が向上しました。海外こそ重要なマーケットとするジムニーですから、こちらが主な目的だったのかもしれません。またAピラーが立ち上がったことで右斜め前の視界が格段に良くなりました。しかし私としては屋根にぐるりと設けられた雨どいが最もありがたいです。これで雨の日にドアを開けた途端、シートにドボドボと水が流れ込むことがほとんど無くなりました。

JCの履くガンメタの標準アルミも大変かっこ良い。オプションで用意されるV字スポークのアルミより良いです。ところがもっと良いのが下位グレードのJLが履く丸穴のテッチン。これ本当にジムニーに似合ってます。手に持った感じでは(JCもスペアで一本背負っている)アルミと重さもあんまり変わらないし、だったらこっちの方がいいのではないかとさえ思えます。

リヤゲートは、バランサーの設定が変更されたのか若干ゆっくり開くようになりました。よく見るとゲート自体の転びも変わっているような気がします。

さて外観について残念な点を一つあげるとすれば「下部が大きく張り出した」フロントバンパーです。そこはジムニー、社外品が数多く販売されていますし、そのあたりのドレスアップも一つの楽しみではありますが、例えば「モーターファン」のサイトで紹介されていた鉄パイプを組み合わせたバンパーなど疑問に感じる製品もあります。私としては、なぜ自動車メーカーがあのようなデザインにしたのかを考えることも必要ではないかと思うのです。歩行者のいる公道を走るのなら。

ところでタイヤの前側に小さな泥除け状の板がついており、これは一体何だろうと思っていたのですが、ある時グーグル先生がこれについて書かれたベストカーか何かの記事を紹介して下さり、空力パーツであることを知りました。確かにタイヤの前面投影面積が大きなクルマほど効果がありそうです。というかグーグル先生怖いです。

 

室内

装備はもう本当に今どきのクルマです。クルーズコントロールまで付いて、言うことはありません。シートヒーターも冬の早朝などに大活躍してくれます。

3ドアについては後席の狭さは相変わらずですが、リヤシートの形状が変わったせいか(ホールド性能を減じた薄っぺらな形状になった)足元が僅かに広くなったような気がします。また座面を立てることなくフラット形状にできるようになりました。その分トランクスペース(と呼べるほどではないけど)に段差ができますので、かさ上げも兼ねる便利な収納ボックスを設けています。

面白いことにパワーウインドウのスイッチがドアから消えました。今回色々勉強させていただいたアピオのサイト「ジムニーを話そう」によると、これも居住性の改善に一役買っているそうです。私としては、雨や雪に晒されやすいドア内張から電気部品が減ることで、より信頼感が高まりました。

ドライビングポジションについてですが、私にとってはかなり調整の自由度が高い、というか良い位置が分かりやすいもので、一度決まれば後は服装によって背もたれをワンノッチ動かすぐらいです。ステアリングもチルト機構付きで、高めが好きな私はほぼ最上部としました。ただしチルトは垂直移動ではなく円運動によるものなので、上げるとどうしてもステアリング上部が遠くなります。難しい所ですね。

 

走行

エンジンをかけます。アイドリングは落ち着くと驚くほど静かです。時折ブルっと震えますが、もうこれは普通のクルマ並みです。1速に入れ、発進します。

クラッチは特に重くはありません。ですがミートポイントが狭いというか、やや神経質に感じられます。スイフトスポーツの操作性とは大きく違います。1速はかなり低めにとってあると思いますが、車重は考慮する必要があるでしょう。

さてこのクラッチなんですが、ちょっと困ったことが起きました。たまになんですけど発進時、バウンジングというかジャダーが発生するのです。一度発生するとどんなに慎重に扱ってもダメで、しばらくその状態が続きます。自分の操作やクラッチ本体に原因があるならいつもそうなるはずだし、気温は関係なく、強いて言えば湿度かなあ、いやそうでもないか。だとすればエンジンの制御か…そんな感じです。ディーラーメカに相談すると、クラッチを名指しした報告はないが、駆動系のガタや振動といったクレームはあり、中にはまあまあ大がかりなパーツ交換に至った例もあるとのこと。よく分かりません。

ところでこれは自分への戒めとして書きますが、MTの変速操作は丁寧に行うことがとても大事です。ジムニーのようにトランスファーを持つクルマの場合、雑なシフトチェンジはギヤボックスのダメージを招き、荒いクラッチ操作はトランスファーまで攻撃の対象となります。ここで思い出すのがラリー漫画の傑作「ガッデム」のワンシーンです。破天荒でイケイケの主人公が走らせた車両のギヤボックスを開けたベテランメカニックが「荒っぽいが雑には扱っちゃいない」とつぶやきます。いくらタフに作られているといってもやるべきことはある、ということですね。

良いお年をお迎えください

長らく続けられてきた不正。今起こっている出来事は、全ての自動車メーカーが何らかの「回答」を迫られているように見えます。
何の落ち度もない歩行者が巻き込まれる痛ましい事故も相変わらず発生しています。
もちろん事故を起こしたくて運転している人などいない。免許証を持っている人は皆「あなたは運転しても大丈夫です」と許されているから運転している。
そして人はますますクルマに頼るようになり、クルマはまだ人の操作を必要とする。この耐えがたい中途半端さ.。
答えはどこにあるのでしょうか。

当ブログのここまでを振り返ってみて思います。はたして初心者の方の役に立ったのだろうかと。残念ながらほとんど訪問者のいない状況から考えても、私の望みはかなわなかったと考えるべきでしょう。
しかしこうも思うのです。もし、本当に運転初心者の方がこのブログを読んだとしたら。それも全て読んだとしたら。
その人は必ず今以上に運転が上手くなります。絶対に、です。なぜそう言い切れるのか。もちろん私が役に立つことを書いたから、などという理由ではありません。
こういったブログを読んだ人はたいていまず反発するものです。「お前なんかに何が分かる」「デタラメ書きやがって」そんなところです。それが普通です。しかしそこでもし「こんなブログからでも何か学べることがあるかもしれない」と考える人がいたとしたら。そう、その向上心がカギなのです。
私がプロドライバーから学んだ最大のテクニックは、「向上心」です(ちょっと変な言い方でした)。どんな些細なことでも役立てようと思うその貪欲な心こそ、その人のスキルを向上させる最大の武器となります。どうすれば急ブレーキを踏まずに済むだろう。どうすればタイヤのグリップを失わずに済むだろう。助手席の人が不快に感じないアクセルの踏み方はどのようなものだろう。そうして考え続けることが、いつしかドライビングの上達につながっていくのです。
とはいえもともと運転が好きではない人だとそう簡単にはいかないことも事実です。ただ何か一つでもうまくいけば、それが「運転は面白い」という気持ちに変化するかもしれない。そういった願いも込めて書き続けてきたつもりです。

それでは。

 



 

考え方 10

あんなに血眼になってガソリン車はだめとか言っておきながら、ろくに人も荷物も載せられないけど0-100km2秒台などという、どこがエコなのかさっぱり分からない金持ち用のミニ四駆みたいなEVなんかポンポコ作りまくって、一体何がしたいのでしょうかあの人たちは。

それはともかく今回は車間距離について少し考えてみます。

 

前と後

 基本的には教習所で習った、速度に応じてその距離を変えていくという考え方でよいと思います。ただし、何キロで何メートルといった単純な計算は、現実の路上ではなかなか当てはまりません。例えば、目の前の先行車がろくに車間距離をとらない煽り気味な走り方をしていたら、あなたはその「先行車の分」も考える必要があります。速度と距離の関係という視点では何かが変わるわけではありませんが、このようなクルマは急ブレーキを踏みがちです。通常の車間距離では前方で何かが起こったときにあっという間に接近してしまう危険があります。クッションが期待できないんですね。私はこのような状況に遭遇したとき、先行車が常識的な車間距離で走っていた場合の距離を想定して走るようにします。要するに広めにとるということなんですが、これはこれで「別の危険」を招くのが難しい所です。

 さらにもう一つ、後続車との距離も考える必要があります。後続車が煽り気味に接近している場合もやはり先行車との距離を広めにとる方が良いでしょう。なぜなら自分が急ブレーキを踏まなければならなくなった時、簡単に追突される恐れがあるからです。

 そういえば私が子供の頃、助手席に乗せてあちこち連れて行ってくれた叔父が、運転しながらよく「俺は常に前後3台のクルマの動きを見ている!」と豪語しておりました。いずれにせよ、車間距離は刻々変化する車列の動きを見て判断する必要があるということです。なので私は自動追従で走行するのはあまり好きではありません。便利だとは思うのですが。

 

「別の危険」

 クルマを運転していますと、すぐ前を走る先行車が、やたらと危険な合流や右折をされて、そのたびに急ブレーキを踏まなければならなくなるという光景を見かける時があります。なんでこの人ばっかりこんな危険な目にあうのかと不思議な気持ちになりますが、これは単なる偶然ではなく、車間距離のとりかたにも問題があるように思います。要は中途半端なのです。

 例えばコンビニなどの駐車場から車道に出ようにもなかなかクルマの列が途切れず、イライラしながら合流の機会を狙っているドライバーが待っている状況で、決して十分な余裕があるわけではないが何とか入れそうだ、と判断されがちな車間距離で走っていればどうなるでしょう。対向車線に右折待ちのクルマがいる交差点でも同様です。そこにはまたもや目に見えない危険が生じることになります。

 日常的にこういった中途半端な車間距離をとる人は、まず間違いなくメリハリのないだらだらとした運転をしており、それも無理な割り込みを招く原因となっています。譲る気があるのか無いのか、そこには明確な思考も意思もほとんど存在せず、ただ漫然とクルマを動かし、誘蛾灯のように危険を呼び寄せているだけなのです。

 

正解はない

 とはいうものの、残念ながら車間距離なんてそうそう自由にコントロールできるものではありません。線路の上を走っているわけではありませんから、常に思うような車間距離で走行することなど不可能といってよいでしょう。ここで重要になってくるのが「予測」です。できうる限りの情報収集を行い、連続的にそれをドライビングに反映させてゆく、それがクルマを走らせるということです。ただ漫然と走るのではなく、常に思考を巡らせることです。それは、きっとあなたの助けになることでしょう。