そして、すぐそばに

 

晴天が続いたので、久しぶりにツーリングに出かけました。行先は宇土半島。八代側から時計回りにぐるっと一周してみました。

とにかくどこをとっても風光明媚な土地で、光り輝く島原湾を眺めながら走っている時には、あまりの気持ちよさに、あらゆるストレスがバイザーの隙間から吹っ飛んでゆくようでした。

途中立ち寄った道の駅「不知火」で、なかなか雰囲気の良い和傘風のビニール製雨傘が売られているのを見つけました。「でもバイクだしな。どうしたものか」とちょっと悩んだのですが、店主の熱心な勧めもあり(頼んだらバイクに縛り付ける紐までくれた)、買って帰りました。使うのが楽しみです。

 

さて、帰宅後、近所の大手スーパーに買い物に出かけたところ、イベントホールになにやらクルマが展示されています。SAKURAでした。

「おーこれが。見た目はデイズだ。中は高級感がある。下回りは真っ平」などとしばしウロウロと眺めた後、現地担当者にいくつか質問してみました。

まずは充電に関して。電源は200Vを利用とのことでしたが、オプションパーツカタログには100V用充電ケーブルも掲載されています。いずれにせよ専用配線で、EV用コンセントを屋外に設置となります。空の状態から満充電までは8時間ぐらい(普通充電時)。これはあくまで目安でしょうから、大体「夜、寝ている間」と考えればいいのではないでしょうか。一番気になる走行可能距離は、空調込みで実質150km前後。もちろんこれも使用状況によって大きく変動すると思います。

車両重量は1トンちょい。ジムニー660と同じぐらいですね。

そして、納期。直近で受注した分については来年の春頃、だそうです。補助金については聞くのを忘れました。

その他細かい点については、すでに様々なメディアで紹介されているでしょうからこれ以上書きませんが、私にとってこの短いひと時で何より印象的だったのは、担当者の本当に嬉しそうな笑顔でした。注文数だけではなく、問い合わせなども含めれば、おそらく「Z」や「アリア」以上の手ごたえを感じられているのではないでしょうか。その笑顔からは、新しい、良いものを自分たちは提供しているのだという喜びが見て取れました(もらうつもりはなかった豪華なカタログまでいただいてしまい…)。

「ところでこの地域で最短の納車はいつですか?」と私。

「昨日です!すぐ隣町」

私はどちらかというと、内燃エンジンが無くなるのは寂しいし、BEVにはまだまだ疑問を感じる石頭な人間です。それでも今日この瞬間、ああ時代は変わっていくんだなと、ハッキリ感じざるを得なかったのです。

 

 

未来は遠く

人類はかつてないほど様々な危機に直面しています。そんな何よりお互い協力し合うのが重要な時に、なぜいつまでも人間同士で争わなければならないのか。これでは月や火星への移住も間に合いません。誰にどのような思惑があるにせよ、それは世界があってのことだと思うのですが。

 

K県はクルマ社会だからでしょうか、新しいクルマが街なかを走り出すのも結構早かったりします。ものすごい田舎道でアリアとすれ違った時は不思議な気分でしたが、意外とコンパクトに見えるその美しくまとまりの良い姿は、日本の原風景にもすんなり溶け込むデザインであり、この点ではbZ4Xより数百倍良いな、と思いました。おそらくサクラもすぐにたくさん走り出すことでしょう。楽しみです。

ただ問題は、相変わらず運転マナーと高齢化です。運転マナーに関しては私も他人の事は言えませんが、しかし皆さん信号無視の度が過ぎます。何しろ交差点に、信号が赤に「なってから」二、三台のクルマが突っ込んでくるのが当たり前。対向車線で右折車が待っていても、です。あまりのデタラメっぷりにMr.ビーンの映画を観ているような気分になりますが、残念ながらこれは改善されることはありません。なぜなら、この調子でも事故が多発していないこと、そしてすぐ前を走るクルマが信号無視をしたのに、なにもしなかったパトカーを見たことがあるからです。つまり県民性ですね。

とはいえ、K県だけのこととは思えないこのような現実を、「仕方ない」で済ませられないのが自動車メーカーです。運転支援装置の進化や性急に進めている自動化も、裏を返せばそれだけ今のドライバーを信用していないということの表れではないかと勘繰ってしまいます。現場の危機感たるや相当なものではないでしょうか。

いずれにせよ、目前に迫った無思考&超高齢化社会に備え、クルマはドライバーを必要としなくなっていくでしょう。ただ人を、ドアからドアへ運ぶ便利な機械として進化していきます。目的地に到着すれば、ドアに向かって車体からせり出したスロープの上を、座席だけが移動してゆく。あるいは大きなアームが伸びてきて、乗員を掴んで運ぶかもしれない。あるいは車体下部から足が出て、階段を上ってゆくかもしれない。そう、こうなるともうトランスフォーマーですね。いつかクルマとロボットの境界は曖昧になってゆき、何か別の存在となるのではないでしょうか。

なんだか変な妄想をしてしまいました。でも「人が想像するものは実現する」というではありませんか。自分が乗るなら、バンブルビーがいいな。

 

 

クルマの話なのかバイクの話なのか

ロードスターにKPCという機能が追加されましたが、その動作を知ったとき私はなぜか、ずいぶん昔にバイク雑誌で読んだ宮崎敬一郎さんの言葉を思い出しました。

「よくものの本にリヤブレーキを使う必要なんかない、なんて書いてあるが信じるな。死ぬぞ」

かつてマイケル・ドゥーハン選手がNSRのハンドルにリヤブレーキレバーを取り付けたのは有名な話ですが、現代のモトGPでも同様の機構が使われていることを考えれば、実に奥深い言葉です。もちろん一般道においてもバイクのリヤブレーキはあらゆる場面で役立ちます。例えば低速で小回りするときなど、リヤブレーキを軽く引きずることで後ろから引っ張られる(旋回軸が後輪に近づく)ような感覚で小さく回ることができます。宮崎さんはコーナリング中のライン変更に使えるともおっしゃっていましたが、これの延長線上にある話ではないかと思われます(想定速度が桁違いですが)。また停車するときなどリヤブレーキをごくわずかに早くかけてやれば、車体の後部が沈み込んで過剰なノーズダイブを抑制し、後輪の接地圧が高まることで安定した制動ができます。

さて、ここで何というかとても変な話になってしまうのですが、私はかつて仕事で乗り回していたミニキャブで、この「リヤブレーキを先にかける」操作をブレーキペダル一個でやろうとしておりました。もちろんサイドブレーキでも使わない限り、そんなことできるわけがありません。では何をしていたのかというと「リヤを先にかけるつもり」でブレーキペダルを踏んでいただけです。おそらく具体的にはまず軽くブレーキをかけてゆっくり(と言ってもほんの一瞬ですが)車体を沈ませ、それから強く制動を立ち上げていたと思われます。何しろヤワな足まわりにボディはグニャグニャ、おまけに天井に脚立を載せたミニキャブはとにかくロールもピッチングも酷いもんで、いかにこれを抑えこむか、そればかり考えながら走っていたのですが、面白いことにこれは実際に効果が現れました。またその過程で制動、コーナリング、前後のグリップコントロール等での左足ブレーキの有効性に気づき、これも、競技中無意識に使えるぐらいになるまで練習を重ねました(勧めているわけではありません!)。今振り返ると単細胞でバカ丸出し、ちゃんと仕事していたのだろうかと疑ってしまいますが。

ロードスターのサスペンションジオメトリーを生かして、ブレーキの有効性をさらに拡張して見せたKPCは大変すごい発想だと思います。やっぱりマツダは侮れん、つくづくそう感じた次第であります。

あるドライバーへの追憶

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 私は今でも「何故コリン・マクレーは1000湖で勝てなかったのか」と、考える時がある。 
 苦手意識があったのかな、などと想像もするが、しかし92年の1000湖では二度も横転しながら8位に滑り込んでいる(二度目は70m転がったらしい)。彼は最初からスプリンターだったのだ。
 もちろん、いくら考えたところでジャーナリストでも関係者でもない、どこにでもいるクルマ好きのオッサンにすぎぬ私に分かることではない。ただ、不思議に思うだけだ。

 マクレーとは同じ年に生まれ、同じBC5 、GC8(中身は別として)のステアリングを握り、バイクが好き・・ということ以外、何の共通点もない。それでも他の多くのファンと同じく、私には特別な存在だった。ヘンリ・トイボネンのように。
 92年の1000湖に限らず、派手なクラッシュの多かったマクレーは「マックラッシュ」などという良からぬあだ名をつけられた時期もあったようだが、それでも翌年93年、BATカラーに彩られたマニュアルミッションのレガシィを駆るマクレーのドライビングは、深い森に訪れた夜明けの空気のように、美しく冴えわたっていた。コーナーの手前から大きくクルマの向きを変えるスタイルは変わらなかったが、例えばポルトガルでのインカー映像を見れば、車格の大きなレガシィを曲げるために必要な量でしかなかったことがうかがえる。余計なカウンターは一切無い。さらに付け加えるなら彼は、ギヤボックスをとてもうまく操る名人でもあったのだ。
 ところで彼の父であり、五度もイギリス選手権チャンピオンを獲得したジミー・マクレーも、すばらしく安定した速さを見せるドライバーである。私が知るのは二十年くらい前のマンクスラリーの車載映像だが、すでにいい歳になっているはずなのにそのドライビングは実に見事なものであった(ミスコースはするが・・)。ちなみにWRC最上位は、83年RACでの3位。また、この年はアクロポリスでも8位を記録している。

本当にうまいドライバーは、クルマを壊さない。それは真実ではあるが、少なくとも95年までのマクレーは速いだけではないドライバーだった。私はそう信じている。

(2013年)

 

なんで金田のバイクに似てくるんだろう


国沢光宏さんの公式サイトで紹介されていた、ホンダの「自立する二輪バイク」の映像を見て驚きました。かなり前から開発されている技術ですが詳しくは知らなかったため、あらためて感心してしまいました。

何より驚いたのはその構造です。静止中はバランスをとるために前輪あたりがゆらゆら動くのかと思ったのですが、動画を見る限り全然そんな様子はありません。不思議に思って見ていると、映像の後半で少し大げさに動いて披露してくれるのですが、リヤのスイングアームピボット部がバンク方向にも回転(実際にはもっと三次元的な運動でしょうが)するようになっている。つまり車体各部でバランスをとる動作を分担しているのですね。でまた、かっこいいんですよこの動きが。ロボット的というか。姿かたちは変わっても、そこにASIMOの面影が感じられると言ったら、大げさでしょうか。この点、ヤマハがバイクに人型ロボットを乗せて操作させているのと比べてみると面白いですね。この調子だと実車を目の前にすると少なからず感情移入してしまいそうで、自立中に指でツンと押してやったら多分一瞬傾いてすぐに元に戻ると思うのですが、その時私は「ごめん、悪気はなかった」と謝ってしまうだろうなあ。

このような構造は一見複雑に見えますが、インホイールモーター式のバイクであればより簡単に取り入れることができるでしょうから、電動化とセットで自立型バイクは急速に普及することになるでしょう。気になるのはこの機能がどのように介入するのか、です。バイクは基本的に倒れることで走る乗り物であり、まっすぐ走っている時でさえ前輪が細かく左右に切れてバランスを保っています。コーナリング中にライダーの感覚に合わない介入をされると少しばかり困ったことになりかねません。とはいえABSやトラコンが、スーパースポーツをサーキットで自在に操れるほどのライダーにも必要とされるほどに進化した現代に、そのような心配は大きなお世話かもしれません。きっとそれらと連携して、より転倒しにくいバイクが出来上がっていくことでしょう。

実際にこの機能が一般化したときに、私のような普通のバイク乗りにとって最も役立ちそうな場面は、駐輪場の出入りなどの取り回し、渋滞時や赤信号で停車する瞬間など極低速走行を強いられる時などでしょうか。何しろ立ちゴケの心配がいらなくなるのですから言うことなしなのですが、最近体力の低下を痛感し、大型バイクを手放してしまった私としては少々複雑な気持ちではあります。うーん。

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ヤマハが目指すもの。走ってみると拍子抜けするほど普通だった