操作について 1

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今はなき友へ


 「考え方」は前回までとし、今回からは実際にクルマを操作する上で気が付いたことを述べていきたいと思います。といっても操作も考え方に基づくものと言えますから、「考え方」とはっきり分けられるものではなく、その辺は曖昧に進めることになるでしょう。また、運転支援装置が大きく発展した現在、私がこれから述べることの多くが時代遅れな昔話に終始してしまうかもしれません。なので、そこから何か役に立ちそうなことを見つけて拾い上げていただければと考える次第です。

 

まずは走らせる

 私が若いころはインターネットなんてまだまだ一般的なものではなく、一人でドラテクを勉強したければ本や雑誌に頼るしかありませんでした(しばらく後VHSビデオへ移行)。でこれがまた当時は実に多くのプロドライバーが書籍を著されておりまして、自分でも何冊読んだのか覚えていないぐらいです。そうして読んでは走り、走っては読んで、何とか上手くなろうと努力しておりました。
 そういった経験から言わせてもらえば、もしあなたが若く向上心に燃えるドライバーであるなら、実のところ理屈は二の次で大丈夫です。まずは走りこむこと。走りこめば感性だけでいくらでも上手くなります。むしろ理屈を必要とするのは、感性や運動機能が鈍り切った私のようなおっさんなのです。これは特に二輪で痛感しました。
 それなら若者には操作についての理屈は必要ないのかというと、そうではありません。みずみずしい感性を持った若者でも、そこに理屈を加えれば、相乗効果によってさらに技術の向上が望めるのではないか、とも思えるからです。

 

目線は何より重要

 さて、私がこれから書こうとしている事は、言うまでもなく「こうすればタイムを1秒縮められる」といった高度な内容ではありません。ごくごく普通の運転に関する話です。なんですが、実はサーキットだろうと一般道だろうと、プロアマ問わず全てのドライバーにとって最も重要と言ってよい事柄があります。まずはそれを一番に挙げておきましょう。それは「目線(視線)」です。
 あなたもクルマ(バイク)は自分が見ている方向に進んでいくという話を耳にしたことがあるでしょう。誰もが行きたい方向を見て走っているのだから当然と思われるかもしれませんが、偉大なるD1ドライバー、のむけんさんが「電柱ば見とると電柱に向かっていきますばい」とおっしゃったように、行きたくない方向であっても視線を固定すればそっちに行ってしまうのです。行ってしまうというよりも、修正がきかなくなると言った方がいいかもしれません。
 ではその「視線を固定してしまう時」というのはいつなのでしょうか。
 例えば山道で左カーブを曲がっている最中に、路面の砂やオイルなどに乗ってタイヤがグリップを失い、クルマがセンターラインを越えて外側のガードレールに向かって滑り出してしまったとしましょう。こんな時、ほとんどのドライバーは恐怖心からそのガードレールを見つめてしまうはずです。こうなるともう、とにかくクルマをガードレールに「近付けない操作」しか考えられなくなります。しかしここで恐怖心を抑え、カーブの正しい出口を見ることができれば、クルマを「曲げる操作」をとれるようになるかもしれません(全く逆の操作が必要になる場合があり非常に難しいのですが)。
 今のは最新のクルマではありえないような極端な例でしたが、他にも山中の複合カーブをスムーズに走るためや、混みあった市街地などを少しでも安全に走るため、目線は様々な場面でとても重要な役割を果たします。目線の「使い方」にドライビングは大きな影響を受けるのです。

  今回の話は言葉足らずだったかもしれません。よければご自身でも研究してみてください。一つ要点をあげるなら、一点(例えば先行車の後部)を見続けないことです。
 とにかく「目線」と「予測」、この二つはクルマを運転する上でとても大事なことなのです。