操作について 2

・ブレーキ 1

 車を運転する上で、最も難しいのがブレーキの操作です。フットブレーキには様々な用途があり、これを上手に使う人はたいてい運転が上手です。同じようにできたらなあなんてうらやましく思うのですが、なかなかそうもいきません。それはともかく、まずはその最も重要なブレーキについて考えてみます。ただし制動の技術面に関しては、ハイブリッド車などが普及した現代においては通用しない面も多々ありますので、考え方のみ参考にしていただけたら、と思います。

踏むとどうなるか

  モータースポーツの世界ではよく「ブレーキが深い」などと表現することがあります。サーキットでコーナーへの進入を争っているような状況は別として、これはより短時間で効率よく減速を行おうとした結果であり、減速開始を遅らせることを目的としているわけではありません。そうして減速をつきつめるほど(あるいは繰り返すほど)に制動装置への負荷は増大し、それと共に発熱量も増加していきます。レーシングカーのブレーキローターが真っ赤に焼けている写真や映像をご覧になったことがありませんか。このことからブレーキは、クルマを動かすために発生させたエネルギーを熱エネルギーに変換する装置であるということがわかります。

なぜ燃費にかかわるのか

 変換された熱は、大気中に放出されてしまいます。クルマを動かすエネルギーの元になっているのは燃料であり、やたらブレーキを使う運転は燃費が悪化すると言われるのはこのためです(大雑把ですみません)。その大気中に捨てられてしまうエネルギーを発電に使って少しでも回収してしまおうというのが、ハイブリッド車などのいわゆる回生ブレーキですね。だからその種のクルマはアクセルを戻すだけで強い制動がかかります。この制動力を積極的に利用した走り方をワンペダル走行と表現し、売り文句にしているメーカーもありますが、かえって速度コントロールが難しくなりそうな気がします。運転したことがないので知らんけど。
 さて、ある区間を移動するために必要なだけの燃料を使用すれば、ブレーキを踏む必要もなく無駄を抑えることができますが、現実としてそれは無理です。そこでなるべく慎重にアクセルを開け、捨てるエネルギー量を減らす。重要なことは、発進から停止までの組み立てです。具体的には、必要最低限の燃料噴射量で発進し(エコ表示等を目安に)、前方の信号が赤に変わるなど停車の必要があるとわかったらなるべく早めにアクセルを戻し、ブレーキによる減速の割合を減らす、ということになります。が、そんなことが自由にできるのは前後に全くクルマがいない時だけですので、下手打って後続車を怒らせないように注意しなければなりません。ただこのことを覚えておけば、燃費の改善に役立つのではないかと思います。
 ところでよく推奨される「ふんわりアクセル」「ふんわりブレーキ」の説明を読みますと、実践することで、同一距離を普通に運転した場合よりも燃料消費量が減らせるとあります。しかし、よりゆっくりスタートすれば、同一距離を走るならばアクセルを開ける時間が長くなるはずです。同じ距離で同じ物体を動かす仕事量に変化が生じるとすれば、これは空気抵抗や機械効率などが複雑に絡んでくる話でもあります。ですから、結局のところ「ふんわりブレーキ」という表現からもうかがえるように、これも本質的には「捨てるエネルギー量を減らす」という目的に帰結すると考えてよいのではないでしょうか。