操作について 3

それにしてもWRCの最高峰クラスで、SSベストをポンポコ叩き出してしまう日本人ドライバーが現れるなんて、すごい時代になったもんです。F1ともども、今年は楽しみ! 

 ・ブレーキ 2

 減速(停止)のための操作
 これは重要な役割です。クルマの速度を落とし、最終的に停車させる。そのためにはぶっちゃけた話、ただ踏めばいいだけなんですが、同乗者のためにちょっと工夫してみるのもいいかもしれません。これまで助手席や後部座席にばかり乗ってきたあなたならよくわかると思いますが、運転者にはわからない苦労がありますからね。
 さて、走っているクルマを止めてみましょう。アクセルから足を離し、ブレーキペダルに足をのせ、力(踏力)を加えていきます。この時よくできたブレーキならば、踏力は一定のままでクルマは減速してゆきます。なぜなら時間の経過と共に運動エネルギーはブレーキを介して放出され、踏力一定でも相対的にブレーキの力が強まっていくことになるからです。つまりその減速の割合がブレーキペダルから感覚として容易に伝わってくるならば、停止するまでの距離を見て踏み加減を決定すればいいだけ、ということになります。もちろん微調整は必要ですが、これならガックンガックンと大きな波を発生させることもありませんし、クルマを上下に揺らす、不快なピッチングを起こさないという利点もあります。そして最後に静かに止まればいい(停車寸前にわずかに踏力を緩めるのがコツ)わけですが、ここまでできる制動装置ならそれも容易でしょう。
 常にこのようなブレーキングを心がけていれば一定のリズムが生まれ、各操作のタイミングがそろってゆきます。それにより同乗者は無意識領域で「呼吸(いき)」を合わせやすくなり、車酔いを起こしにくくなることも期待できるでしょう。
 と、ここまで言っておいてなんですが、今述べたことはあくまでも理想であり、実際はその時の路面状態や交通状況、先行車の走り方、さらにはATのシフトプログラム(副変速機が組み込まれているものは特に)等によって大きく左右されますので、そううまくいくものではありません。まして、回生制動なる機構が一般化し、ナチュラルな制動感覚を喪失した現代のクルマにおいては、「上手な減速」など困難を極めます。これではドライバーもそれなりの制動しかしなくなるし、これがすべての操作に共通する話だったらとっとと全自動化するしかないんじゃないか、なんて思うわけです。私の考えが時代遅れという理由はここにあります。話がそれましたか。それましたね。
 ところでエンジン性能を「官能的」などと表現することがありますが、実はブレーキにもこれは当てはまるのです。ちょっとバイクの話になって恐縮なんですが、その昔2サイクル全盛の頃だったでしょうか、とにかく速いけどブレーキが効かない、なんてことが当たり前の時代がありました。私が乗っていたバイクも、比較的安いバイクばかりだったということもあり同様だったのですが、当時はどのメーカーも、ブレーキにあまりコストをかけていなかったんでしょうね。それからかなりたって、中古のXJR400Rというバイクを買った私は、そこで初めてモノブロックキャリパーというものに出会ったのですが、バイク屋を出て最初の交差点でブレーキレバーを引いた瞬間、驚愕しました。そのしっとりとしたタッチは、剛性感にあふれていながらもコントローラブルで、過去に経験したことのない「上質さ」とでもいいましょうか、「今まで俺が乗ってきたバイクは何だったんだ」なんて思うほど、それは衝撃の体験だったのです。現在はラジアルマウントなんてものが標準化されてきておりますが、あ、またそれましたか。

 これは私の大変個人的な考えなのですが、ブレーキ性能の良し悪しは、ドライバーの運転技術に大きな影響を与えます。雑な効き方をするブレーキなら雑な加減速(=運転)をするようになりますし、それとは逆に、よいブレーキなら操作に一定のリズムが生まれ、それが「予測されやすい運転」につながり、同乗者は車酔いしにくくなると思うのです。
 ただし、あと数年でこの考え方は無意味となりますが。