操作について 4

新型BRZは、迫力がありますね。きっと実車は写真で見るよりもっとかっこいいでしょう。室内もフルデジタルのインパネなど現代的になりました。ひと昔前のSFアニメを彷彿させる雰囲気です。ただ、私のようなオヤジは、メーターと名の付くものは実在する針が動く「機械感」が無いと寂しいのです。

 ・ブレーキ 3

 緊急時

 どんなに気を付けて運転していても、急ブレーキを踏まなければならない瞬間に出くわすことがあります。

 まだABSが一般的ではなかった時代、あまりに強くブレーキペダルを踏みつけると、タイヤがいわゆるロック状態となってグリップ力が大きく低下し、制動距離がかえって伸びてしまうなどということがありました。そういった時に踏力をコントロールできるドライバーは、間違いなく腕のいいドライバーと言えます。これはなかなか難しい技術だったため、私もかなり練習しましたが、やっただけの見返りはありました。今ではタイヤ性能も向上し、なにより、優れた電子制御によるABSがほとんどのクルマに装備されていますから、格段に安全になっていると言えます。しかしそれは良いことばかりでもありません。というのも、自分の知る限りここ数年の新型車には、軽くブレーキペダルを踏むだけで唐突に制動力が立ち上がる、いわゆるカックンブレーキが増えているからです。なぜこのようなことになっているのか。営業の方の話やドライバーの「現状」から想像するに、いざという時、脚力の弱いドライバーでも十分な制動力を発揮させられるよう、あえて立ち上がりを早めに設定していると考えられます。だから緊急時はおもいきりブレーキペダルを踏み込んでください、とあるのですね。もちろんこれはABSとセットの考え方です。

 いまやブレーキのコントロール性能など、スポーツカー以外で語ることなどナンセンスな時代となりました。ただ私としては、例えば軽バンなどの新車装着タイヤの性能も含め、老若男女問わず運転する可能性のあるクルマほど高性能であるべきではないか、という気がするのです。

 向きを変える

 走行中のクルマの進行方向を変えるものは、いくつかあります。ハンドル以外に何があるのかと思われるでしょうが、ブレーキも使い方によっては、その一つとなります。もちろんハンドルを操作した時のように、自在に右左折できるわけではありませんし、一般的な使い方とは言えませんので、これについては別の機会に述べたいと思います。

 踏み間違いについて

 マニュアルミッション車(以下MT車)は、アクセルとブレーキペダルの踏み間違いを起こしにくい、という意見があります。これについて考えてみます。
 MT車のエンジンをかける時は、まずブレーキペダルを踏み、ギヤがニュートラルになっていることを確認し、なおかつクラッチペダルを踏み込んだ状態でスターターを回すのが基本です。これを怠ると、エンジンがかかった瞬間クルマがわずかに飛び出してしまうことがあります。ただ、その場合でも駐車ブレーキかフットブレーキによりエンストしますし、そもそも今のMT車クラッチペダルを踏まないとエンジンがかからないようになっています。いずれにせよこれは踏み間違いではありません。
 次にクルマをスタートさせます。再びクラッチペダルを踏み込み、ギヤを1(クルマによっては2)速に入れ、パーキングブレーキを解除し、ここで初めて右足をブレーキからアクセルペダルへ移動し、徐々に踏み込んでいきます。この時、当然ながら同時にクラッチも操作しなければクルマは動けません。つまりエンジンがかかったMT車は、クラッチがつながり、なおかつギヤが入ったまま停車しているという状態はありえないということです。その状態でエンジンが動いていられるのは、AT車なのです。
 特に踏み間違い事故を起こしやすい、駐車スペースへの出入り中はどうでしょうか。まず微速でしょうから、ブレーキを踏むのは切り返しか微調整の時ぐらいで、クラッチとアクセル操作が基本となります。この二つで大体の速度調節ができるからです。クルマによってはクラッチをつないだままアイドリング回転域で動くことは可能ですが、そのような実験的な運転をする人はまずいないでしょう。つまり踏み間違うも何も、右足はほぼアクセルペダルに乗ったままなのです。
 極低速での車速コントロール中、MT車はエンストしないためにクラッチの操作が欠かせず、右足はアクセルペダル中心となります。これに対しクリープ現象(機構)を持つAT車はクルマが自分で動くため、速度が落ちるほどブレーキペダルを使用する時間が長くなる、ということです。非常に乱暴な表現ですが、止まろうとするクルマを動かす操作と、動こうとするクルマを止める操作の違いとでも言いましょうか。

 今では多くの新型車が、急な飛び出しを防ぐ制御を取り入れていると聞きます。それでも完全ではないし、そもそもそういった備えのないクルマもまだたくさん走っている。これにドライバーの意識や高齢化を考え合わせると、非常に中途半端で危険な状況にあると私は思います。自動車メーカーが全自動化を急ぐ理由は、ここにもあるのではないでしょうか。