操作について 9

・ステアリング 5

 

タイヤありき
 ところでハンドルを切るとなぜクルマは曲がるのでしょうか。ここでタイヤに注目してみましょう。
 タイヤはクルマの中で最も重要な部品です。専用に開発されたタイヤを装着しなければバランスを崩してしまい、まともに性能を発揮できないクルマもあるぐらいです。クルマを走らせることはタイヤ(グリップ力)をコントロールすること、と言っても過言ではありません。それだけに、正直このようなブログで掘り下げていいことではないのですが、できれば初心者のうちに知っていただきたいことでもありますので、そのタイヤについて少しだけ話を進めてみます。そこでもし興味がわいて、さらに深く知りたいと思われたなら、プロドライバーのドライビングや専門誌などで勉強してみてください。今はネット上でも様々な情報を得ることができるので、ほんといい時代ですよね。ただ、そこには意見の相違も多々見られますし、読んでいて混乱することもあるでしょう。私としては、大体の理屈が分かったらとにかく走ってみてほしいと思います。絶対的な速さは二の次です。自分の体でクルマの挙動を感じ取って、その後また考える。そうやって自分なりのドライビングを追求していくのです。それはきっと、楽しい探求の旅になるはずです。

 激務
 タイヤのグリップ力はよく縦方向と横方向に分けて説明されます。いわゆる摩擦円ですが、おかしな説明をして誤解を招いてはいけませんので簡単に言います。
 カーブを曲がるときは、しっかり減速を終わらせてから(縦)、クルマの向きを変える(横)。そしてクルマの向きが変わったら(横)、加速を開始する(縦)。
 これはあくまでも「基本」であり、必ずしもこんな風にはっきり分けて操作するというわけではありませんが、一本のタイヤにできる仕事には限りがあるので、うまく振り分けましょうという考え方です。
 さて、ハンドルを切って舵角を与えられた前輪は、接地面の変形を伴いながら転がってゆき、クルマは向きを変えていきます。極低速域であればクルマも素直に曲がると考えていいのですが、速度が上がるにつれ、そう簡単には曲がってくれなくなります。考えてもみてください。走行中にハンドルを切ると、それまで真っ直ぐ走っていたクルマの前輪「だけ」が突然向きを変えるのです。そこから重い車体(後輪も)を前輪が進もうとする進路に向けなければならないわけですから大変です。無理やり曲げようとしてタイヤを変形させすぎたり、摩擦力を大幅に超えたりしたら目も当てられません。
 こう考えると、コーナリングに際して乱暴な加減速やハンドル操作は禁物という話にも納得がいくのではないでしょうか。

 D1
 前回私はアンダーステアという表現を使いました。ですが実際のところ常にカーブの曲率や路面状況が変化する一般道では、明確な基準(ニュートラルステア状態)を置くことはできません。それどころかアンダーとかオーバーとか言っても、実はドライバーの感性や運転の仕方によってその度合いも変わってしまうのです。タイヤを設計しているとか、サーキットを針の穴に糸を通すようなライン取りで走行しているというのなら話はまた変わってきますが、多くの場合、運転の結果として表れるものと言ってよいでしょう。よって私は一般道の走行においてアンダー(オーバー)ステアという感覚は、多分に相対的(個人的)なものだと考えます。
 そしてこのアンダーステアオーバーステアを自在に操り、その技術を競う競技があります。いわゆるドリフトです。