がんばれハコバン
先日、国沢光宏さんの公式サイトを拝読していると、ホンダが2024年にN-VANの電気自動車を発売する、という記事がありました。とても興味深い話です。いよいよかな、という感じです。低価格はもちろん、クルマとしての完成度についても、設計の古い先行他社の車両を上回っていることは想像に難くありません。
航続距離は200km程度とのことですので、当然ながらその距離に応じた使い方をされるのでしょうが、軽ハコバンといえば職人の重要な足としての顔もあります。自動車評論家は誰も気にしませんが、職人は、酷寒や猛暑の下、電気や水さえ得られない過酷な現場に通わなければならないこともしばしばです。冷暖房が使えなければ、命にかかわることもないとは言いきれない。そんな時に「バッテリーが上がった」では済まされません。
このN-VANが現場で徐々に鍛え上げられ、いつの日か職人の信頼できる足として完成されていくことを願いたいものです。
ところで、同記事の中で、重心の高いハコバンに大型ルーフキャリアまで乗せるのは危険だ、とも書かれています。確かに昨今はやりの超ハイトタイプなんかは怖いですよね。ただ仕事でよく使われているハイゼットやエブリィ、ミニキャブなどは、キャリアに脚立を2本、などという状態で普通に走っていますが、だからと言ってあちこちで横転しまくっているわけではありません。
そういった使われ方をする車両は、大抵道具や荷物を満載しています。多くの場合、空荷ではないのです。ですから、見た目ほどには重心が高いとは言えないのです。そもそも運転する方も心得て走らせていますし、それでも何かあったらその時はその時。そんなもんです。
カー・アンド・ドライバーと私
少し前に発売された「カー・アンド・ドライバー」11月号は、巻末の岡崎宏司さんのコラムによると44周年号とのこと。44年!同紙の一ファンである自分にとっても、感慨深いものがあります。
記憶にある一番古い「カー・アンド・ドライバー」は、巻頭にアメリカで発表されたばかりの「スバルXTクーペ」の特集記事が組まれた号で、表紙に描かれた青いXTクーペの美しい姿をなんとなく憶えています(そういえばアルシオーネ発表会の時の私は、中学生ではなく高校生でした)。当時は月2回刊行されており、発売日には、取り寄せをお願いしていた近所の小さな本屋さんに飛んで行ったものです。
岡並木さんや、島田荘司さんの文章に初めて触れたのも「カー・アンド・ドライバー」で、特に、当時は全く読んだことが無かった島田さんの推理小説には、後年どっぷりはまることになりました。
一番印象に残っている記事は、岡崎さんの試乗記(たしか911だったと思う)です。繊細なアクセルコントロールを行う方法として、なんと「靴の中で足の指を曲げる」操作を紹介されていました。通常アクセルペダルの操作は、主に足首を動かして行うものですが、そうではなく足の指の動きだけでペダルを操作しようという、まさにミリ単位のコントロール法。いたく感心した私は、当然免許取得後すぐに実行してみましたが、まったくできませんでした。
さて現代の「カー・アンド・ドライバー」、残念ながら試乗記に関しては毒にも薬にもならないものばかりで、言葉は悪いけど、一種のカタログ雑誌として読むべきものかと思います。ただし、その反動と言っていいのか「ドライバーズ・インフォメーション」のページがこれまた、なかなかの踏み込みっぷりで、読みながら毎回ヒヤヒヤしています。このギャップは何なんですかね。
いずれにせよ、この今という自動車界激震の時代、ただただクルマが好きだった少年の頃の思い出がいっぱい詰まった「カー・アンド・ドライバー」が、今後も末永く出版されることを願うばかりです。
阪高トライアル
今朝、最初の現場に向かうべく、阪神高速池田線に乗った。
交通量は少なめで、その分流れも悪くはない。それなのになんだか走りにくい。環状線に合流するあたりで、それが顕著になってきた。
今日は平日とは違う。猛然とあおってくるトラックも、やたらと飛ばす営業車も、突然幅寄せしてくるタクシーも普段ほどにはいない。家族連れや、うらやましいカップルの若者達が乗ったセダンやRVばかりである。
なのに、どうにも怖い。
この感覚をどう説明すればよいだろうか。
「頭文字D」の中で、池谷先輩が拓海とイツキをS13に乗せて峠を攻めるシーンがあった(と思う)。この時の拓海の感じる恐怖とイツキの考える恐怖の違い、あんな感じである。
阪神高速(というより大阪市内)におけるクルマの動きというのは、かなり無秩序に見える。しかしその是非はともかく、どれほどギリギリの状態になっても、最終的には引くべき方が引く、といった暗黙の了解がある。なんとなく見極めがつくのが救いだ。
運転とはつまるところ予測することだ。それにはクルマをコントロール出来ている事が条件となる。また予測しなければコントロール出来ないとも言える。この二点は背中合わせである。そしてそれはドライバーとクルマの間だけの事ではなく、同じ路上を走るクルマどうしの間にもあてはまる。だが、まわりのクルマとの関係を考えずに走るドライバーの行動は予測できない。
私は、クルマは家電品と同等になってきており、誰にも扱いやすいという意味でこれは良い事だと考えていた。だが、クルマにはある種の扱い方というものがある。まずい事に、何か起こった時にそれは要求されるが、普段はほとんど見えてこない。クルマ側の支援もまだ発展途上であり、そもそも単独で安全を確立させるには限界がある。
誰も電子レンジのドアを上手に閉める方法など考えない。リモコンがどうやってテレビのチャンネルを変えるのかなんてどうでもいいことだ。
私の考え方は古いのだろうか。
(2012年8月)
さすがは、スズキ 2
トヨタ車はレトロですね。初代ミライは「UFO戦士ダイアポロン」そっくりだったし、先代までのカムリは「トイストーリー」の悪者ロボットザーグ、GRヤリスは「ロボコップ」のED209、一時アニメ的と言われたプリウスも、アニメにしたって80年代テイストだったし、今度のクラウンも、子供の頃読んだ図鑑に登場する未来のスーパーカーみたいで懐かしい。昭和生まれの私には刺さりますな。
ハンドリングは、正直あまり良いとは言えません。具体的に言うと、切り始めた直後に、ややこじるような手ごたえが発生する領域があります。おそらく強めのキャスター角によるものと思われますが、これにより、ハンドルを回す手ごたえに「波」があるように感じてしまうのです。実際その領域でハンドルを握る力を弱めてみますと、「ガクン」と急激に戻ろうとします。以前借りたワゴンRもまったく同様で、走り出してすぐ最初のカーブでアンダーを出してしまい、ちょっとドキッとしたことがありました。これはまあ、台車のコマかとつっこみたくなるほど素直に向きを変える自分のクルマの前輪に慣れているせいかもしれませんが。
今のクルマはこういうものだと言われればそれまでですが、交差点などで大きく切り、戻しをする場面では、操作の仕方によってはギクシャクした動きにつながりかねません。例えば切ったハンドルを戻すとき、力を緩めて手のひらの中でクルクルっと回す、いわゆるセルフステアリングを利用する癖がある人は、この「波」によって走行ラインのふらつきを起こします。私がやらかしました(とはいえこの操作方法を否定するつもりはありません)。ちゃんと手を添えて戻すにしても、回転トルクの変動に合わせて回すのは簡単ではないし、まして前輪を駆動しているわけですから、加減速が加われば余計難しくなります。特に右左折しながら急いで合流しようとするときなど蛇行に陥りやすく、基本通り、合流前にしっかり安全を確保することがより重要となります。
それにしても、様々な制約の中で設計された結果なのでしょうから文句を言ってはいけないのかもしれませんが、昔のFFに逆戻りしてしまったようで、なんか…ねえ。ドライバーの高齢化が進む中、決して安全とは言えない方向ではあると思います。
ただし、これはあくまで参考までに追記しますが、狭く曲がりくねった下りの山道をそれなりのペースで走りますと、この不自然さは影を潜めます。おそらく、フロントのサスストロークが縮められやすい状況だからだと思われます。
次にブレーキについてですが、意外にもカックンではなく、それどころかやや弱めに感じられました。回生ありきということなのでしょう(ワゴンRはもう少し効いたような気がしますが)。確かに、アクセルオフで回生動作による減速が始まるため、不便はありません。ただしここにも問題があります。減速が進み、停止直前あたりまできたとき、この回生制御が「カクン」と途切れます。するとその一瞬クルマが加速したような感覚に陥り、あわててフットブレーキを強めるため、結果ギクシャクした制動となります。特に私のように早めに緩くブレーキをかけ、なだらかな上り坂で止まっていくようなイメージで制動するタイプは、このようになりがちです。なので、この制御が切れる瞬間に停止できるように、メリハリよくサッと止まる方がまだましかもしれません。とはいえ、渋滞時など比較的ゆっくり走行している場面では、結構頻発します。もしかしたら強弱の調整があったのかもしれませんが、このあたりの構造も根本的な改良を望みたいところです。
運転支援装置について。いまやこのような軽自動車にも先行車追従型クルコンが付いているんですねえ。ほんと私は浦島太郎です。一度、かなり流れの悪い国道でこれを試しているとき、左側のコンビニからの強引な合流によって先行車が急停車したことがあったのですが、どうするのかと思って何もせずに見ていたら、即座に減速開始。全く安全な距離で停車し、その後、何事もなかったように走り始めました。まるで割り込みを見ていたかのような、ドライバーの感覚に非常に近い制動に驚きました。私個人としてはアイサイトより自分の感性に近い動きと感じられ、「これは信用できる」と思いました。
最後に。借りた時に表示されていた平均燃費は18.5km/l。リセットの仕方がわからず、そのまま往復150キロの通勤を中心に数日走った後の数値は、18.6km/lでした。
先代よりかっこよくなったし、いいクルマだと思います。4WDの車高を10mmほど上げて、オープンカントリーなんか履かせたら楽しそうですね。もう、みんなやってるか。
さすがは、スズキ
私が住む町には、なぜか暴走族がたくさんいます。昼夜問わず、毎日のように老人と動物ばかりのこの町を旧車で走り回る彼らの姿を見かけるたび、私はなんだか懐かしい気持ちでいっぱいになります。そんな彼らに対して、ちょっと気になることがあります。先日クルマで出かけた折、家の近所の、国道との交差点で赤信号に引っかかったのですが、族車が一台、先に信号待ちをしておりました。彼は私がぴったり後ろに停まったのを見て、これまたなぜか興奮し、けたたましく空ぶかしを始めました。競技車両の爆音に比べれば盛夏の蝉の鳴き声ぐらいなので、それはまあいいのですが、気になったのは信号を守っていたことです。なにしろその交差点は、最長2分赤という長尺もの。しかも彼の前にはたった一台のクルマしか停まっていないのに、ちゃんと後ろに並んでいる。そんな族がどこにいるんだと私は腹が立ってきました。そういえばその国道で、暑い中、渋滞の列にしっかり並んで耐えている2台の族車を見たこともあります(空ぶかしはしていた)。ものすごい違和感でした。これでは、K県にあってはむしろマナーが良い方です。警察に全く相手にされていないのも当然。なんでもそうですが、「中途半端」から得られるものは無く、時間の無駄です。
車検(大規模整備と言った方がふさわしい)が来ました。今回の代車は現行ハスラーで、オーディオ以外はフル装備の2WDターボ車です。前回のスイフトスポーツといい、そこに込められたオーナーに対するメッセージは明確…ですな。
乗ってみての感想です。
まずはシートに座って調整します。残念ながら、納得できるドライビングポジションは見つけられませんでした。アルトワークスでも感じた事なのですが、ペダルに合わせるとハンドルが遠くなりすぎ、ハンドルに合わせるとペダルが近くなりすぎる。私が、想定される中心的ユーザーの体型から外れていたということでしょうか。ハンドルは近めが好み、ということを差し引いても、購入をあきらめるに十分な理由となりました。
走り出しての印象ですが、なかなかパワフルです。アクセルを踏み込んだ瞬間モーターアシストが入り、グイっと、やや乱暴に押し出されます。慣れ(操作)の問題とはいえ、もう少し抑えてほしい気もしますが、4名フル乗車を考慮しての事なのかもしれません。それにこのアシストがあれば、CVTのギクシャク感の軽減にも役立つはず…と思って、動作モニター睨みつつ、なるべくアシストが入らない領域でオンオフしてみたのですが、特にはギクシャクしません。このあたり、よく作りこまれているなあと感心しました。ところで恥ずかしながら最近知ったのですが、CVTにもトルコン(流体?)が併用されているケースがあるそうですね。ここにどのような機構を使うかで変わってくることもあるのでしょうか。
ターボということもあり、速度の乗りも早いです。CVT特有の、びにょーんとした非常に気持ち悪い加速感ですが、速い。足回りは、硬すぎず柔らかすぎずで、無難です。段差でちょっとポコポコ言いますが、乗り心地について、家族から文句が出ることはまずないと思います。さらに、アイドリングストップ状態から、再始動した時の振動の少なさにも驚きました。ボディやエンジン、エンジンマウントなどの設計にこだわりが感じられます。