このクルマは令和のKP61だ ジムニーシエラ(1)

 

JB74ジムニーシエラ(JC)5MTにしばらく乗る機会がありましたので、感想を述べたいと思います。

登場からすでに4年経過しているうえ、走行条件は舗装に限るという感想文になりますが、未だ納期は長く、ディーラーのお話ではATの受注の方が圧倒的に多いことから普段の買い物にも使えるセカンドカー扱いで購入される人もおられるだろうということで、書きます。

ただし、旧型との比較については、比較対象車が私の愛車である24万キロ走行のJB23Wジムニー(4型)となりますので、あんまり参考にはならないかもしれません。申し訳ないです。

 

外観

旧型に比べて四角くすっきりとしたデザインは、働く機械の機能美を感じさせるものです。これにより搭乗者の頭や肩辺りの空間が拡がり、居住性が向上しました。海外こそ重要なマーケットとするジムニーですから、こちらが主な目的だったのかもしれません。またAピラーが立ち上がったことで右斜め前の視界が格段に良くなりました。しかし私としては屋根にぐるりと設けられた雨どいが最もありがたいです。これで雨の日にドアを開けた途端、シートにドボドボと水が流れ込むことがほとんど無くなりました。

JCの履くガンメタの標準アルミも大変かっこ良い。オプションで用意されるV字スポークのアルミより良いです。ところがもっと良いのが下位グレードのJLが履く丸穴のテッチン。これ本当にジムニーに似合ってます。手に持った感じでは(JCもスペアで一本背負っている)アルミと重さもあんまり変わらないし、だったらこっちの方がいいのではないかとさえ思えます。

リヤゲートは、バランサーの設定が変更されたのか若干ゆっくり開くようになりました。よく見るとゲート自体の転びも変わっているような気がします。

さて外観について残念な点を一つあげるとすれば「下部が大きく張り出した」フロントバンパーです。そこはジムニー、社外品が数多く販売されていますし、そのあたりのドレスアップも一つの楽しみではありますが、例えば「モーターファン」のサイトで紹介されていた鉄パイプを組み合わせたバンパーなど疑問に感じる製品もあります。私としては、なぜ自動車メーカーがあのようなデザインにしたのかを考えることも必要ではないかと思うのです。歩行者のいる公道を走るのなら。

ところでタイヤの前側に小さな泥除け状の板がついており、これは一体何だろうと思っていたのですが、ある時グーグル先生がこれについて書かれたベストカーか何かの記事を紹介して下さり、空力パーツであることを知りました。確かにタイヤの前面投影面積が大きなクルマほど効果がありそうです。というかグーグル先生怖いです。

 

室内

装備はもう本当に今どきのクルマです。クルーズコントロールまで付いて、言うことはありません。シートヒーターも冬の早朝などに大活躍してくれます。

3ドアについては後席の狭さは相変わらずですが、リヤシートの形状が変わったせいか(ホールド性能を減じた薄っぺらな形状になった)足元が僅かに広くなったような気がします。また座面を立てることなくフラット形状にできるようになりました。その分トランクスペース(と呼べるほどではないけど)に段差ができますので、かさ上げも兼ねる便利な収納ボックスを設けています。

面白いことにパワーウインドウのスイッチがドアから消えました。今回色々勉強させていただいたアピオのサイト「ジムニーを話そう」によると、これも居住性の改善に一役買っているそうです。私としては、雨や雪に晒されやすいドア内張から電気部品が減ることで、より信頼感が高まりました。

ドライビングポジションについてですが、私にとってはかなり調整の自由度が高い、というか良い位置が分かりやすいもので、一度決まれば後は服装によって背もたれをワンノッチ動かすぐらいです。ステアリングもチルト機構付きで、高めが好きな私はほぼ最上部としました。ただしチルトは垂直移動ではなく円運動によるものなので、上げるとどうしてもステアリング上部が遠くなります。難しい所ですね。

 

走行

エンジンをかけます。アイドリングは落ち着くと驚くほど静かです。時折ブルっと震えますが、もうこれは普通のクルマ並みです。1速に入れ、発進します。

クラッチは特に重くはありません。ですがミートポイントが狭いというか、やや神経質に感じられます。スイフトスポーツの操作性とは大きく違います。1速はかなり低めにとってあると思いますが、車重は考慮する必要があるでしょう。

さてこのクラッチなんですが、ちょっと困ったことが起きました。たまになんですけど発進時、バウンジングというかジャダーが発生するのです。一度発生するとどんなに慎重に扱ってもダメで、しばらくその状態が続きます。自分の操作やクラッチ本体に原因があるならいつもそうなるはずだし、気温は関係なく、強いて言えば湿度かなあ、いやそうでもないか。だとすればエンジンの制御か…そんな感じです。ディーラーメカに相談すると、クラッチを名指しした報告はないが、駆動系のガタや振動といったクレームはあり、中にはまあまあ大がかりなパーツ交換に至った例もあるとのこと。よく分かりません。

ところでこれは自分への戒めとして書きますが、MTの変速操作は丁寧に行うことがとても大事です。ジムニーのようにトランスファーを持つクルマの場合、雑なシフトチェンジはギヤボックスのダメージを招き、荒いクラッチ操作はトランスファーまで攻撃の対象となります。ここで思い出すのがラリー漫画の傑作「ガッデム」のワンシーンです。破天荒でイケイケの主人公が走らせた車両のギヤボックスを開けたベテランメカニックが「荒っぽいが雑には扱っちゃいない」とつぶやきます。いくらタフに作られているといってもやるべきことはある、ということですね。