操作について 10

目線(視線)について少し補足したいと思います。

運転は逆算 
 例えば山間部などのカーブが続く道を運転中、何となく走行ラインが定まらない、リズムよく走れないなどと感じる時があります。理由はいろいろ考えられますが、ここでは「目線」に関係する何らかの原因があると仮定して考えてみます。
 走行中の目線は、前述のような道の場合、手前から先へ先へと送るのが基本です。そして遠くまで見通せるほど走行ラインが分かりやすくなり、そのためにどのようにクルマを操作すればいいのかが導き出されます。「操作の逆算」ですね。道の先の状況に関して取得できる情報は、多ければ多いほど、より安全に、正確に走れます。そういえば昔、クルマの大先輩H氏が助手席に座っている私に、「手前のコーナーなんて見てへんよ」と、よく言ってました。この人は中年まで2.0近い視力を保っていた為なおさらで、その視力は大きな武器になっていたはずです。速い人って、そういう細かい部分の積み重ねにその理由があったりしますね。ちょっと話がそれましたが、もちろんどこまで見るかは、その時の道の状況や車速によって変わってきます。とにかく、これが上手くいかないと操作がギクシャクする恐れがあるわけです。

利き目
 ここまでは主に「目線の使い方」について述べてきました。次に「目」そのものの使い方について考えてみたいと思います。今更な話で恐縮ですが、手や足に「右利き」「左利き」があるように、目にも「利き目」があるそうです。であれば、当然運転中も、その見やすい方の目の視界を中心に見ているわけで(個人差はあるでしょうが)、そうなると自分では気付かないうちに脳内での視野を狭めてしまっている、かもしれません。
 これは経験に基づく話です。山間部の流れの良い広い国道を運転中、内側は視界良く見通せる少々回り込んだ右カーブにさしかかったとしましょう。顔を少し右に向け、カーブの先へ視線を送り、問題がないか確認します。同時に、さしかかったカーブの路面状態、特に外側の浮き砂利や舗装の荒れによる凹凸等、これらがハンドルの切り始め、つまりクルマの向きを変え始める最も重要なポイントに存在していないか、注意を払わなければなりません。この時、もしドライバーが利き目中心にものを見ていて、それが右目であれば、意識はかなり左に寄ることになります。奥と手前を行ったり来たりする感じとでも言いましょうか。そうなると、逆算の組み立てに支障をきたす恐れが出てきます。そのようなことが起こったら、どのように対処すればいいでしょうか。
 カーブに進入する瞬間、先を見ながらも、意識を左目に寄せてみます。左を見るわけではありません。心の中で左目の視野に意識を向け、左右の目の視界のバランスをとってみるのです。うまく行けば、これによってカーブの各ポイントを広く認識でき、同時に自然と走行ラインが浮かび上がってきます。もちろんこれは、左カーブでも同じことです。

視点
 少し極端な例だったかもしれませんね。誰もがこのような視界の問題を抱えているわけではありません。ただ、ドライビングの問題を解決するためには、色んなアプローチがあると知っていただければ幸いです。
 思うのですが、今回のような話は、むしろ白内障緑内障を患っている私のような年配者にこそ知ってほしい気がします。これは他人事ではないのですが、年をとるにつれ、自分を客観視できなくなるんですよ。人間は。