操作について 8

千葉県で起こった痛ましい事故以来、通学路や抜け道の安全性を見直そうという話が多く出始めました。とても大事なことだと思います。ただ、約十年前に京都府亀岡市で同様な事故が起こった時も社会問題となり、まったく同じような話が出ました。一体、何が変わり、何が変わっていないのでしょうか。

 

・ステアリング 4

 前輪の向き
 クルマの進行方向を変えるのは前輪です(4WSなんてのもありますが)。そこで、この前輪と「曲がる」ということの関係について考えてみます。
 ハンドルを回すと前輪が向きを変えます。当たり前の事なんですが、ではどのぐらいハンドルを回すと、どのぐらい前輪に角度がつくのか、考えたことはおありでしょうか?
 例えば大きくハンドルを動かして山道のカーブを曲がっている最中に先行車の前輪を観察すると、意外なほど切れ角が付いていないことに気づきます。個人差はあると思いますが、感覚で捉えたものと現実との間にはギャップがあるということですね。ちなみにこのあたり、「頭文字Ⅾ」では感心するほど正確に描写されています。しげの先生最高です。それはともかく、この前輪の向きをイメージすることがクルマを曲げるにあたって、なかなか重要なのです。
 もちろん「そんなこと考えなくてもハンドルを回して曲がればそれでいいんだ」という意見もあるでしょうし、それはその通りです。まして状況によってはクルマが自分でハンドルを回すこの時代に、人間の運転能力など磨いたって大した意味はないでしょう。それを承知の上で話を進めます。
 私は「スターウォーズ」より「スタートレック」の方が好きなのです。

 

どういうメリットがあるのか

 あんまり多くはないと思いますが、いくつか。
 例えば交差点を曲がった直後、急ハンドルでバタバタと蛇行してしまうケース。ただ反射的にハンドルを回しているとこうなりがちです。修正するにあたって、どれだけ回せばどうクルマが動くのか、なるべく正しく捉えないと正確な操作は難しくなります。そこで重要になってくるのが「目線」。進むべき方向をしっかり見ていると実際の進行方向とのズレが分かり、どのぐらい操作すればいいのか判断できます。また、ここで感覚が養われます。
 次に、降雪や凍結などで非常に滑りやすくなった路面を走行する時。なんですが、実際のところ今どきのクルマはエンジン出力や電子制御デフ、ABSなどの総合制御(さらに言えば進化したスタッドレスタイヤ)により、横滑りなどを起こしにくくなってはいます。しかし完全ではないし、そもそも自分のクルマにはそんな機構は付いてない、という方もおられることでしょう。
 そんなわけで、カーブを曲がっている最中、タイヤが滑り出したとしましょう。この時どのタイヤが真っ先に滑り出すかは駆動方式や走り方によって変わってきますが、最も厄介なのは前輪が先に外へ滑り始めた時です。切った感覚よりクルマが曲がらない、外に流れる、いわゆるアンダーステア状態ですね。もし前輪の切れ角とクルマの向きの関係をしっかり掴んでいれば、初期のアンダーステアを察知できるはずです。現実には、このような路面では終始アンダー状態なのですが、その割合の変化を捉えるということであり、こういう時は0.1秒でも早く対処することが肝心ですから、有利になります。

操作について 7

BEVは、これまでの一般的なクルマに比べると構造が単純なこともあり、自動車メーカー以外の多くの企業がその製造に参入しています。それがどういう結果をもたらすのかは分かりませんが、バッテリーの価格が下がれば、利益の問題で消えていった小型のスポーツカーたちを安価で復活させることも可能ではないでしょうか。競技車両なども作りやすそうだし、もしかしたら意外な形で参加型モータースポーツの人気が再燃するかもしれませんね。

 

・ステアリング 3

 右折と応用

 旋回軸を意識することが重要なのは、もちろん右折でも同じことです。交差点の右折では、スペースに余裕がある分浅い曲率でだらだらと曲がってしまいがちです。それが許される状況なら別にいいのですが、このような運転が癖になると、例えば道幅の狭い交差道路に進入したとたん、たまたま出てきた対向車の鼻先をかすめるような危なっかしい状況を招く場合があります。そこで、できるだけ交差点の中央へ進入し、曲がるときに旋回軸の置き場所を想定しながらハンドルを切り(対向車が途切れるのを待つときなど、車体及び前輪は真っ直ぐにしておくことをお勧めします)、対向車線に影響しないようなラインで曲がることができれば言うことがないですね。
 さらに、旋回軸の意識は曲がりくねった山道でも応用がききます。そういった道を走る時、カーブの進入では前輪(頭)をどこに持っていくかに意識をとらわれがちです。そこで少しばかり後輪も意識してみましょう。カーブ内側の後輪がセンターラインに対して一定の距離を保ちながらも、なめるように走行する状態をイメージしてハンドルを操作します。
 このやり方のメリットは、走行ラインが安定することと、自分のクルマがセンターラインを越えにくくなる、ということです。長い年月運転していると、必ず左カーブ(相手から見ると右)でセンターラインを割ってくるクルマと出会います。というより割ってくるのが当たり前と考える方がいいぐらいです。カーブの曲率はたいてい一定ではないし、クルマの旋回特性もありますから仕方ない面もあります。実際のところ、少々はみ出されてもまずぶつかることはありません(右カーブで割ってこられるのは最悪の事態ですが)。しかし、このように漫然と状況任せの運転を続けることは積極的にクルマをコントロールしようという意識の低下につながります。対向車の危険だけでなく、見えない先に歩行者がいたり駐車車両があるかもしれないと考え、まずは自分の走行車線の中央を走るように心がけることも大事かと思います。アウトインなどは、それからの話かと。
 ところで念のため一つ付け加えておきたいことがあります。それは、クルマの左右方向の両端はサイドミラーだということです。タイヤがセンターラインを踏み越えていなければ良い、というわけではありません。注意しましょう。

後進
 後進(バック)の時もやはり同じです。駐車などで後進しながらハンドルを切る時、旋回軸を意識することで内側後輪の軌跡が見えてきます。ただ、こういう場合はまず駐車スペースや道幅などをよく確認し、どの位置から曲がり始めるかなど、最初の組み立てが重要になります。私ははっきり言って縦列とか苦手です。

分かれ道

池袋暴走事故に関して、トヨタが初めてコメントを出したと聞いて少し驚きました。それだけ慎重に調査していたのでしょう。

最近はペダルの踏み間違いによる事故を減らすため、急発進(誤発進)抑制装置などが普及してきました。しかしそれらは作動条件がある範囲に限られている事、本当に急発進が必要な時に危険回避ができない恐れがある、といった問題点もあります。そこでカメラやレーダーなどによる周囲の状況の捕捉が重要となるわけで、これらすべての機能が連携することで効果がより高まると考えます。
が、これも過渡期の考え方でしかありません。
十年近く前の話ですが、クルマの自動運転化へ向けての一過程として、周囲のクルマとオンラインで連携できないものかと考えました。これは、離合の激しい阪神高速を毎日走っていて、死角の恐ろしさを嫌というほど体験していたからです。死角にクルマが入った時、「互いの」運転席のモニターに表示されれば、どれだけ危険を低減できることでしょうか。
しかしその後、自動車メーカーはもっと手っ取り早く現実的な方法で対処しました。サイドミラーに何らかの表示を行う機能です。これは本当に素晴らしい装備で、バックモニターと同じぐらい標準化すべきものだと私は思っています。
ただ、この死角の問題で、特に注目すべきは「入った」側なのです。なぜなら「入られた」側は気づかない時があるとしても、「入った」側は考えをめぐらせればすぐに分かることだからです。つまり状況をよりコントロールできるのは「入った」あるいは「入ろうとしている」側ということであり、気が付かなかったでは済まされないその重要性から、さきほど「互いの」と書きました。これもまた、「予測」の一部なのです。
やがて自動運転化が進むにつれ、このサイドミラーも消えてなくなることでしょう。安全な運航を確保するため、やはり周囲のクルマと何らかの手段で通信し、連携することになります。なぜならその機能は、歩行者や自転車に対しても応用が可能だからです。今やみんな同じものを持っているのですから。
いつの日か、全能の存在がすべてをコントロールすることになるでしょう。まずは静岡から始まるかもしれません。 

「アクセルペダルが床に張り付いているように見えた」。
これほど何が起こったか誰の目にも明らかな状況で、罪に問われることなく終わるのか。日本という国家のあり方そのものが問われているような気がします。

 

操作について 6

・ステアリング 2

 

角田選手も色々言われてますが、これだけ「真面目さ」以外の事で話題にのぼる日本人ドライバーも珍しいので、これはこれで悪くないですな。

中心点(軸)
 小さく曲がるといっても、そのためにはどうすればよいのでしょうか。私が重要だと考えるのは、意識をどこに置くか、ということです。なんとなく外にはみ出したくない、でも内側も怖いなどと漠然と思いながら曲がっていると、不安定な運転に陥りがちです。
 ここでクルマを真上から見た図を思い浮かべてください。ヘッドライトが上です。左にハンドルを切ったとき、前輪は左に傾きます。この前輪の進行方向と、前輪の中央で直角に交わる線を左に伸ばしてゆき、左右後輪の中心を結んで左に伸ばした線と交わるところが旋回の中心となります。前輪の舵角が小さいときは、この中心点が遠くなる、すなわち大きな交差点など、比較的速度が高い状態だと考えられます。もっとハンドルを回してみましょう。前輪の舵角が増してゆき、中心点はどんどん後輪に近づいてきます。つまり速度の低い左折ほど後輪に旋回の軸が近づいてくるわけです。なぜこのようなことが起こるかというと、同じ一台のクルマであっても、舵角が増すほど前輪の描く円と後輪の描く円との直径の差が大きくなっていく、いわゆる内輪差が拡大するからですね。
 単純な話をややこしくしてしまっているようで恐縮ですが、要はこの旋回の中心点を意識してやればいいわけです。クルマからの距離は正確にはわからないし、常に変化するものなので大体でいいと思います。ほぼ直角に曲がる状況を想像してみましょう。左折時にまず最もクルマに近づける角の部分(家の塀など思い浮かべると分かりやすいかもしれません)を決め、意識を置いた軸の部分が角を過ぎれば曲がれるわけです。実際は移動しながら曲がるので、刻々と変化する軸の位置に対応した操作になるのですが、これがイメージできると教習所で求められた「小さく曲がる」ことが可能になりますし、必然的に鼻先も最小半径で曲がることになります。ちなみにモータースポーツで言うところの「ドアターン」は、リヤタイヤのスライドにより旋回軸をコントロールすることで、これを究極まで突き詰めたものです。
 なお、曲がりきったところで対向車線に寄りすぎていることに気づき、慌ててハンドルを切り増すなど、ここでも蛇行するケースを見かけますが、これは目線の問題です。安定して曲がれるようになれば常に曲がった先に視線を送ることができるようになり、必要なハンドル操作量も視覚から自然と導かれるようになります。

  機会があれば、一度広くて安全な場所で色々試してみてください。一番いいのはダートラ場でパイロンを立てての練習です。楽しすぎてクルマが傷だらけになってしまいますけど…。

操作について 5

・ステアリング 1

 曲がる、ということについて考えてみます。
 話を戻すようで申し訳ないのですが、ドライビングポジションはどのように決められていますか。もちろん教習所で教わった通りでいいと思いますが、ペダル類はもとより、ステアリングホイール(以下ハンドル)までの距離は特に重視してください。大きく切ったときに上体がシートから離れるようだと、緊急時に切り遅れる恐れがあります。近すぎると、軽自動車など室内幅が狭いクルマでは、やはり素早く切ろうとした時に肘がドアの内張に接触してしまうことがあります。かなり痛いです。ペダルとの位置関係もありますから、チルトやテレスコピック機能があれば、必ず試してみてください。
 ハンドルを握る位置は好きなところで構わないと思うのですが、あまりギュッと握りこむのはよくありません。常に、持ち変えることを前提としてください。その昔、田嶋伸博さんが著書の中で「例えるならドラムスティックを持つように」とおっしゃっていたのですが、余計分からなくなったことを覚えてます。あの人、ドラムを演奏されるんですかね。

 交差点など

 免許取りたての人が右折するのが怖くて左折を繰り返しながら目的地に向かった、という話を聞いたことがありますが、笑えません。私もそうでした。左折は左折で怖いところもあるし、何とかならないか模索してみましょう。
 何より重要なのは安全確認ですが、これも教わったことをしっかり守り、細心の注意を払って行えばよいと思いますので、ここでは単純に操作についてだけ考えます。そこに余裕ができれば、安全確認に意識をより振り分けられる可能性があります。
 まずは左折です。左折は右折より短い時間で、より大きな操作、安全確認を行う必要がある上、道幅や角度に大きく影響を受けますので、苦手な人が多いのかもしれません。例えば、よく見かけるのが大きく右にクルマを振ってから左折(以下蛇行左折)するケースです。おそらく狭い交差路(T字路など)で左側面をぶつけるのが怖くて繰り返すうち、癖になってしまったのでしょう。ちなみに右折でもこれをやる人がいます。本当です。対向車線にはみだしてまで振る人は別として(こちらも実際にいます)特に危険な行為とも思えませんが、教習所では左折時はなるべく左に寄せるように指導されますので、ちょっと掘り下げてみましょう。
 どうしても右に振らなければ曲がり切れない場合はともかく、無駄な蛇行左折を防ぐには、これから進入しようとする道に対する適切なアプローチを知ることが大事です。もちろん初めて曲がる道なら分かりにくい時もあると思いますが、それでも方法はあります。まずはしっかりと減速することです。慣れてくると、これを忘れてしまいがちなのです。
 蛇行左折をみていると、判で押したように急ハンドルです。荷重移動による右前輪のコーナリングフォース増大を狙っているなら分からないでもありませんが、デメリットが勝ります。もう少しだけゆっくり近づいて目測の時間をとってやれば、狭く見える道でも意外なぐらい左寄せで曲がれる時があります。教習所の、S字やクランクの入り口がそうでしたね。もし、離れた位置から見ても明らかに難しそうな様子でしたら、早めに少しずつ右に寄るのがいいかと思います(右折と勘違いされないようにウィンカーも早めに)。
 ところで「ゆっくり」にはもう一つ重要な点があります。それは「ある位置におけるハンドルを切る時間」を稼ぎ出すことです。最も左側に寄る地点で最も速度を落とし、そこで大きくクルマの向きを変える。よく考えれば教習所でみんなやってきたことなのですが、やっぱり忘れてしまうんですね。

※追記

 ドライビングポジションに関して、大事なことを書き忘れていました。それは、ヘッドレストについてです。ヘッドレストは、いざという時に頚椎を守る、非常に重要な部品です。上下に動かせる場合、必ず頭部の適正位置に合わせてください。
 かつては軽ワンボックスのリヤシートなど、はなからヘッドレストが付いていないクルマもありましたが、コストダウンかなんか知らんがシートを置くならヘッドレストは絶対だろう、と私は思うのです。