操作について 6

・ステアリング 2

 

角田選手も色々言われてますが、これだけ「真面目さ」以外の事で話題にのぼる日本人ドライバーも珍しいので、これはこれで悪くないですな。

中心点(軸)
 小さく曲がるといっても、そのためにはどうすればよいのでしょうか。私が重要だと考えるのは、意識をどこに置くか、ということです。なんとなく外にはみ出したくない、でも内側も怖いなどと漠然と思いながら曲がっていると、不安定な運転に陥りがちです。
 ここでクルマを真上から見た図を思い浮かべてください。ヘッドライトが上です。左にハンドルを切ったとき、前輪は左に傾きます。この前輪の進行方向と、前輪の中央で直角に交わる線を左に伸ばしてゆき、左右後輪の中心を結んで左に伸ばした線と交わるところが旋回の中心となります。前輪の舵角が小さいときは、この中心点が遠くなる、すなわち大きな交差点など、比較的速度が高い状態だと考えられます。もっとハンドルを回してみましょう。前輪の舵角が増してゆき、中心点はどんどん後輪に近づいてきます。つまり速度の低い左折ほど後輪に旋回の軸が近づいてくるわけです。なぜこのようなことが起こるかというと、同じ一台のクルマであっても、舵角が増すほど前輪の描く円と後輪の描く円との直径の差が大きくなっていく、いわゆる内輪差が拡大するからですね。
 単純な話をややこしくしてしまっているようで恐縮ですが、要はこの旋回の中心点を意識してやればいいわけです。クルマからの距離は正確にはわからないし、常に変化するものなので大体でいいと思います。ほぼ直角に曲がる状況を想像してみましょう。左折時にまず最もクルマに近づける角の部分(家の塀など思い浮かべると分かりやすいかもしれません)を決め、意識を置いた軸の部分が角を過ぎれば曲がれるわけです。実際は移動しながら曲がるので、刻々と変化する軸の位置に対応した操作になるのですが、これがイメージできると教習所で求められた「小さく曲がる」ことが可能になりますし、必然的に鼻先も最小半径で曲がることになります。ちなみにモータースポーツで言うところの「ドアターン」は、リヤタイヤのスライドにより旋回軸をコントロールすることで、これを究極まで突き詰めたものです。
 なお、曲がりきったところで対向車線に寄りすぎていることに気づき、慌ててハンドルを切り増すなど、ここでも蛇行するケースを見かけますが、これは目線の問題です。安定して曲がれるようになれば常に曲がった先に視線を送ることができるようになり、必要なハンドル操作量も視覚から自然と導かれるようになります。

  機会があれば、一度広くて安全な場所で色々試してみてください。一番いいのはダートラ場でパイロンを立てての練習です。楽しすぎてクルマが傷だらけになってしまいますけど…。